最終更新日 2024年12月30日 by hotelli
「乗馬を始めてみたいけど、一体何から揃えれば良いんだろう?」
「乗馬用品って高価なイメージがあるけれど、本当に全部必要なのかな?」
そんな悩みを抱えている方は、意外と多いのではないでしょうか。
乗馬用品は、確かに他のスポーツ用品と比べて高価なものが多いです。
そして、初心者の方にとっては、「買うべきもの」と「買わなくてもいいもの」の境界が曖昧になりがちです。
しかし、ちょっと待ってください!
実は、ポイントさえ押さえれば、無駄な出費を抑えつつ、安全かつ快適な乗馬ライフをスタートさせることができるんです。
私は、田中宏一と申します。
北海道帯広畜産大学を卒業後、馬具メーカー「アサミ乗馬装具」で商品開発に携わり、その後スポーツ用品メーカー「カトー株式会社」の広報部を経て、現在はフリーライターとして活動しています。
馬具メーカーでの開発経験と、その後の幅広いジャンルでのライター歴を通じて、私は“本当に必要な道具”を見極める目を養ってきました。
この記事では、そんな経験を基に、乗馬用品の賢い選び方を皆さんにお伝えします。
必須アイテムと過剰投資を避けるポイント
さあ、ここからが本題です。
乗馬用品を揃えるにあたって、何から手を付ければよいのでしょうか。
初心者が陥りがちな「不安解消のための多め買い」
乗馬を始める際、多くの初心者が「あれもこれも必要なのでは?」と不安に駆られ、ついつい多くのアイテムを買い揃えてしまいがちです。
「乗馬ブーツは、足首をしっかり固定できるハイカットのものが良いって聞いたけど、ローカットでも大丈夫かな?」
「鞭って、最初は長めの方が使いやすいのかな?でも、短い方が扱いやすいって言う人もいるし…」
気持ちはよくわかります。
私も最初はそうでした。
ですが、経験を積んだベテランの方々に話を聞くと、「最初はあんなにたくさん買わなくてもよかった」という声をよく耳にします。
→ 実際に使用頻度が低いアイテムに投資してしまう
→ サイズが合わずに買い直すことになる
→ クラブのレンタル用品で十分だったと後悔する
「とりあえず一式揃えておけば安心」という心理は理解できますが、後々「使わない用品」が出てきてしまうのも事実なのです。
実際に持っておきたい基本セット
では、本当に必要な基本セットとは何でしょうか。
結論から言うと、最低限必要なのは以下のアイテムです。
- 鞍(サドル)
- ヘルメット
- 手綱
- 鞭
これらは、馬と安全にコミュニケーションを取るために欠かせない、いわば「必須アイテム」と言えます。
1) 鞍(サドル): 馬の背中に装着し、騎乗者が座るための道具。
馬と騎乗者、双方の快適性に直結する最も重要なアイテムです。
2) ヘルメット: 落馬などの事故から頭部を守る、安全装備の要。
自分の頭にフィットするものを選ぶことが重要です。
3) 手綱: 騎乗者が馬に指示を伝えるための重要なコミュニケーションツール。
馬の口に装着するハミ(ビット)と連結して使用します。
4) 鞭: 馬に推進力を与えたり、方向を指示したりするための補助的な道具。
初心者の方は、扱いやすい長さのものを選ぶと良いでしょう。
これらのアイテムを選ぶ際には、価格だけでなく、馬とのコミュニケーションを重視した選び方を心掛けることが大切です。
たとえば、鞍を選ぶ際には、馬の背中にフィットし、騎乗者の体型にも合ったものを選ぶ必要があります。
また、手綱は、馬の口への当たりが柔らかく、騎乗者の手に馴染むものを選ぶことが、スムーズなコミュニケーションに繋がります。
鞍(サドル)選びの見極め方
乗馬用品の中でも、特に重要なのが鞍(サドル)です。
鞍は、馬と騎乗者をつなぐ、いわば「架け橋」のような存在です。
素材と価格のバランス
鞍の素材には、主に「本革」と「合成素材」の2種類があります。
それぞれのメリット・デメリットを比較してみましょう。
項目 | 本革 | 合成素材 |
---|---|---|
価格 | 高価 | 安価 |
耐久性 | 適切なお手入れで長持ち | 本革に比べると劣る |
手入れ | 定期的なオイル、クリーム塗布が必要 | 比較的簡単 |
フィット感 | 使い込むほど馬と騎乗者の体に馴染む | 本革に比べると劣る |
見た目・風格 | 高級感があり、使い込むほど味わいが増す | 本革に比べると劣る |
重量 | 重い | 軽い |
本革製の鞍は、価格は高価ですが、適切なお手入れをすれば長く使うことができ、使い込むほどに馬と騎乗者の体に馴染んでいきます。
一方、合成素材の鞍は、価格が安く、手入れも比較的簡単です。
どちらの素材を選ぶかは、予算や使用頻度、そして「どれだけ長く愛着を持って使い続けたいか」という点を考慮して決めると良いでしょう。
実際に試すべきフィット感とオプション
鞍選びで最も重要なのは、馬の背中と騎乗者の体型にフィットしているかどうかです。
- 馬の背中の形状に合っているか
- 騎乗者の座り心地はどうか
- 鞍と騎乗者の間に適切なスペースがあるか
これらの点をチェックするために、必ず試乗してみることをおすすめします。
また、鞍には様々なオプション機能があります。
たとえば、以下のようなものです。
→ クッション性の高い素材で衝撃を吸収する
→ 滑り止め加工で安定した騎乗をサポートする
→ 騎乗者の体型に合わせて細かく調整できる
しかし、これらのオプション機能が、必ずしも全ての人にとって必要とは限りません。
「本当に必要な機能」を見極め、自分に合った鞍を選ぶことが大切です。
ヘルメット&ボディプロテクター
落馬などの事故から身を守るために、ヘルメットとボディプロテクターは欠かせないアイテムです。
安全性とコストを両立する基準
ヘルメットやボディプロテクターを選ぶ際には、まず安全基準を満たしているかどうかを確認しましょう。
日本では、主に以下のような安全基準が用いられています。
- PSCマーク: 消費生活用製品安全法に基づいて、国が定めた安全基準に適合していることを示すマーク
- SGマーク: 製品安全協会が定めた安全基準に適合していることを示すマーク
また、ヨーロッパの安全基準である「CEマーク」や、アメリカの安全基準である「ASTM規格」なども参考になります。
「高価なヘルメットやボディプロテクターが、必ずしも安全性が高いとは限らない」
これは、私が馬具メーカー時代に学んだ教訓の一つです。
安全基準を満たしていることが大前提ですが、それ以上に重要なのは、自分の頭や体にフィットしているかどうかです。
買い替え時期とメンテナンス
ヘルメットは、一度でも強い衝撃を受けると、内部の衝撃吸収材が損傷し、安全性が低下してしまいます。
そのため、落馬などで強い衝撃を受けた場合は、必ず新しいものに買い替えましょう。
また、ヘルメットやボディプロテクターは、汗や汚れによって劣化が進みます。
定期的に汚れを落とし、風通しの良い場所で保管するようにしましょう。
- ヘルメットの内装を取り外して洗う
- ボディプロテクターの表面を拭き掃除する
- ジッパーや留め具の動きが悪くなったら、潤滑剤を差す
これらのメンテナンスを行うことで、安全装備を長く、安全に使用することができます。
手綱・ビット・その他の付属品
手綱やビット(ハミ)などの付属品は、馬とのコミュニケーションを円滑にするために重要な役割を果たします。
揃える前に知っておきたい用途と特徴
手綱は、騎乗者が馬に指示を伝えるための重要なツールです。
素材には、革製やナイロン製などがあります。
- 革製の手綱: 手に馴染みやすく、使い込むほどに味わいが増す。
- ナイロン製の手綱: 軽量で水に強く、手入れが簡単。
一方、ビットは、馬の口に装着する金属製の道具で、手綱と連結して使用します。
ビットには様々な形状や材質があり、馬の性格や反応に合わせて選ぶ必要があります。
→ スナッフルビット: 最も一般的なビットで、初心者から上級者まで幅広く使用される。
→ カーブビット: 馬の口への当たりが柔らかく、繊細なコントロールが可能。
→ ペラムビット: 強い制動力を発揮するビットで、上級者向け。
これらの道具は、馬との信頼関係を築く上で非常に重要です。
しかし、最初から全ての種類を揃える必要はありません。
過剰購入を防ぐ「共用・汎用」アイテム
乗馬クラブに通う場合、手綱やビットなどの付属品は、クラブで用意されているものを共用できるケースが多いです。
特に初心者のうちは、クラブの馬具を借りて、様々な種類を試してみることをおすすめします。
「自分専用の馬具を持つ必要があるのは、どんな場合?」
そう疑問に思われるかもしれません。
それは、自分の馬を持つようになった場合や、競技会に出場するようになった場合です。
それまでは、クラブの馬具を借りたり、他のメンバーとシェアしたりすることで、無駄な出費を抑えることができます。
以下は、代表的な乗馬用品についての専用品推奨/共用・レンタル可否の一覧表です。
用品 | 専用品推奨度 | 共用・レンタル可否 | 備考 |
---|---|---|---|
鞍(サドル) | ★★★★★ | △ | 馬の背中、騎乗者の体型に合わせる必要あり。レンタルはサイズ限定的 |
ヘルメット | ★★★★★ | × | 安全性最優先、サイズ・フィット感が重要。共用は衛生的にも非推奨 |
ボディプロテクター | ★★★★☆ | ○ | サイズが合えば共用可。ただし、安全性は自己責任 |
手綱 | ★★☆☆☆ | ◎ | クラブの馬具で十分な場合が多い。 |
ビット | ★★☆☆☆ | ◎ | 馬との相性あり、種類豊富。最初はクラブの馬具で試すのがベスト |
鞭 | ★☆☆☆☆ | ◎ | 長さ・種類は好み。クラブの備品で十分 |
ブーツ | ★★★☆☆ | △ | サイズが合えばレンタル可。足首のサポート性など、機能重視で選ぶ |
チャップス | ★★☆☆☆ | ○ | 防寒・保護目的なら、サイズが合えば共用・レンタル可 |
グローブ | ★☆☆☆☆ | ◎ | 消耗品、手に馴染むものを。クラブ備品でも可 |
※推奨度:★の数が多いほど専用品推奨
メンテナンスと寿命を延ばす工夫
乗馬用品は、適切なお手入れをすることで、長く使用することができます。
革製品のケアでコストを抑える
鞍や手綱などの革製品は、定期的なメンテナンスが必要です。
オイルやクリームを塗って、革に栄養を与え、乾燥やひび割れを防ぎましょう。
- 使用後: 柔らかい布で汗や汚れを拭き取る。
- 週に1回: クリーナーで汚れを落とし、オイルやクリームを薄く塗る。
- 月に1回: 保革油を塗り込み、革に栄養を与える。
また、革製品は湿気に弱いため、風通しの良い場所で保管することが大切です。
カビが生えてしまった場合は、早めに専用のクリーナーで対処しましょう。
合成素材用品の洗濯・保管方法
合成素材の乗馬用品は、革製品に比べて手入れが簡単です。
洗濯機で洗えるものも多く、汚れたらすぐに洗うことができます。
ただし、ジッパーや留め具などの金属部分は、錆びたり、動きが悪くなったりすることがあります。
洗濯後は、金属部分をよく乾かし、必要に応じて潤滑剤を差すようにしましょう。
- 洗濯ネットに入れて、弱水流で洗う
- 直射日光を避け、風通しの良い場所で陰干しする
- ジッパーや留め具は、開閉を繰り返して動きを確認する
これらのメンテナンスをこまめに行うことで、乗馬用品の寿命を延ばし、結果的にコストを抑えることができます。
まとめ
「乗馬用品は高い」というイメージがありますが、賢く選べば、無駄な出費を抑えつつ、安全かつ快適な乗馬ライフを送ることができます。
- “最低限の装備”で最大のパフォーマンスを発揮するためのポイント
- 本当に必要なアイテムを見極める
- 価格だけでなく、機能性やフィット感を重視する
- レンタルや共用を上手く活用する
- 適切なメンテナンスで、用品を長持ちさせる
これらは、私が馬具メーカー時代とライターの経験を通じて体得した、いわば「馬との対話を深めるための良質な装備選び」の極意です。
そして、良質な道具を揃えることは、単にコストを抑えるだけでなく、馬との信頼関係を築き、乗馬技術を向上させる上でも非常に重要なのです。
馬はとても繊細な生き物です。
人との微細なコンタクトを敏感に感じ取ります。
だからこそ、道具選びにはこだわりたい。
この記事が、皆さんの乗馬ライフをより豊かにする一助となれば幸いです。
無駄な出費を抑えつつ、愛馬とともに、素晴らしい時間を過ごしてください!
そして、もし「これだけは欠かせない!」という、とっておきの乗馬用品があれば、ぜひ教えてください。